小動物アーカイブZ

A rolling stone gathers no moss

szégyen a futás, de hasznos

逃げるは恥だが役に立つ』の原作漫画を読み終えた。作者の海野つなみ氏はインタビューで「どっちを先に見ても2度おいしい」という趣旨の話をしていたが、個人的にはドラマの方を先に観ることをおすすめします。何だったら漫画は興味がよほどなければ読まなくてもいいよ。率直に言って原作の方は絵に魅力がないし、内容も生々しい表現が多く、主人公の森山みくりの人間性も作者の怨念が滲み出ていて胃もたれしそう。女性の視点で描いた恋愛エッセイとして自分は読みました。台詞もやたら字が多くて、本人が言うように「小賢しい」いやむしろ「理屈っぽい」。後半はただのバカップルになってたし、なのに敬語で会話してるのにも興ざめ。

一方、テレビドラマの方は素材を生かしながらも垢を削ぎ落し、上手くまとめたな、という印象。むしろテレビの方が凝縮してるはずなのに、原作にはない名場面も多い。例えば百合ちゃんと沼田さんがバーで酒を酌み交わしつつお互いを慰め合ってるシーンとか、大好き。こんな重たい主題を扱ってるのに、底抜けに明るい。これだけ笑って泣けて人を愛し愛される幸せな気持ちになれる連ドラ見たことない(褒めすぎ?)。脚本家の野木亜希子氏の力量もあるんだろうけど、それだけじゃない気もする。ガッキーをはじめ藤井隆富田靖子など配役もほぼ完璧と言っていい。エンタメとして極めて完成度の高い仕上がり。

例えば、冒頭ふたりが契約結婚に至る経緯についても原作の方は漫画という表現媒体の特性もあり、割とサラッと流しているのに対し、テレビドラマでは主人公みくりに妄想癖があり突拍子もない言動をするキャラクターという説明がストーリーに組み込まれているし、二人の決断に対する両家の両親の反応も詳しく描かれている。一番、自分が腑に落ちなかったのはみくりの提案で「恋人契約」をする場面。観念的、抽象的でよくわからない。テレビの方はわかりにくいなりに上手く誤魔化していたけど、漫画の方は余計に作者の理屈っぽさを際立たせていたように思う。逆に「ハグの日」は斬新な発想だった。これもテレビの方がより効果的に使っていたとは思うけれど。

Fine

Fine

 

あと、逃げ恥といえばパロディ。漫画版では『徹子の部屋』に始まり、『情熱大陸』等、秀逸なパロディが披露されていたが、これもドラマ版の方がさらに洗練されていたように思う。矢継ぎ早に繰り出されるパロディの数々…サザエさんの予告でさらに『桐島、部活やめるってよ』をぶっこんでくる貪欲さ…ストーリー本編の中に挿入するタイミングというかセンスがお見事。

参考リンク:

他にも『まこっちゃん』のぐわしが出てきたり、『アルプスの少女ハイジ』の主題歌のフレーズが出てきたり、『エヴァンゲリオン』のパロディの場面でみくりの元彼の名前がシンジ君だったり、とにかく芸が細かい。